腐れ大学生のブログ

ゲームや日常生活での出来事を書き連ねています。

ブックレポート第3回目 高瀬舟

高瀬舟

著:森鴎外

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 高瀬舟とは島流しにされた罪人を送る舟のことだ。罪人は一人だけ親類を舟に同乗させることができる。主人公の庄兵衛は、その舟を護送する役人だ。

 そんなある日庄兵衛は奇妙な罪人に出会う。名を喜助といった。

 喜助は、今から島流しにあうというのに、楽しそうな様子である。気が狂った様子もない。不思議な男だ。なんでも、喜助曰く、自分は京都にいた頃、随分ひどい暮らしをしたもんだから、それに比べたら、島での暮らしは心躍るばかりだという。苦労続きの喜助にとって、お上から渡された幾ばくかのお金は、生涯手にしたことのない金額だという。

 喜助の話を聞き、庄兵衛は、この男と今の自分を比べてみた。確かに今の自分は、生活に苦労はしていないが、余裕があるわけではない。喜助と自分に一体どれほどの差があるというのだろうか、庄兵衛はそんな疑問を抱いた。

 喜助は弟を殺した罪のため、これから島流しの憂き目にあうそうだ。その仔細は以下の通りである。

 喜助は両親を亡くしてからというもの、弟と二人で困窮した生活を送っていた。そんな折、弟は病に伏せる。働くこともできず、あまつさえ兄に苦労を掛けた自覚のあった弟は、喜助にこれ以上負担を掛けることを厭い、自殺を試みた。しかし、自死には至らなかった。弟が部屋で苦しんでいたところ、喜助が帰宅する。弟は喜助に、俺を殺してくれと頼み込む。悩んだ末、喜助は弟を楽にするためその手を汚したのだ。

 

 話の大筋はこんなところだ。私は高瀬舟を読んだ時、喜助が弟を手に掛けたように、どちらの選択をしても後悔するかもしれない状況はそれ程珍しいものでもないのではないかと思った。

 私なりに、判断に悩む例題を考えてみた。友達の恋人の浮気現場を目撃した時、友人にその事を話すだろうか。これは人によって意見が相当分かれると思う。彼らがまだ仲睦まじい関係を築いているのだとすれば、胸の内に秘めておくかもしれない。だが、友人のためを思って真実を告げるのが正しいと判断するかもしれない。

 口を噤んだほうが良いのか、真実を教えるのが良いのか、人間関係に明確な答えはない(と思っている)以上、悩み続けるのが人の性なのかもしれない。

 幸い、私は人生経験が薄っぺらいので、そのようなケースに遭遇していないが。