腐れ大学生のブログ

ゲームや日常生活での出来事を書き連ねています。

今日から本の紹介始めていきます 第1回目 山月記

山月記

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 山月記。国語の教科書に収められているほど有名な話であるが、大人になった今もう一度読んでも面白かった。概要をざっくり説明すると、李徴という才気溢れる男が、夢半ばで挫折し自尊心がボロボロになり、突如旅先で虎になったお話である。人間が突如異類の身となる話というのはそれだけでインパクトが有る。ウェブ小説で人外転生というジャンルは未だ根深い人気があるが、山月記はそれとは少し話の方向性が異なる点に注意だ。

 授業で扱われる「山月記」が伝えたい教訓を探るのは簡単だ。才能があっても、人を寄せ付けず、教えを請わないで、一人で成功するわけがないということだろう。

 それを理解するためには「臆病な自尊心」が表すものものをしっかり把握しておかなくてはならない。

 臆病な自尊心を説明するために、本文の一部分を引用させてもらう。

己の珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった」 

 ここを少し意訳すると、己が非才だと気づいてしまう恐れがあるため、苦して才能を伸ばそうともせず、己が非凡であるのを半ば信じているから、凡夫と交わることが出来なかった。ということだ。

 この臆病な自尊心というのは、何も李徴だけでなく、多くの人が胸の内に飼い潜めているのではないかと思う。昔何かしらで結果を出したものの、今は何処かパッとしない生活を送っている、なんて人にはとても刺さるのではないだろうか。なまじ実績がある分、自分の才能には自信があるものの、高みを目指していくと、やがて自分が凡人であったことに気づく。かくいう私も臆病な自尊心を飼いならした一人である。

 因みに、定期試験ではこの臆病な自尊心の他にもう一つ、「尊大な羞恥心」というやつがよく問われる。臆病な自尊心というのは字面からある程度内容を推測できるが、尊大な羞恥心とはどういった意味だろう。対になっているだけで中身は同じことを述べているのだろうか。この辺りを聞かれても、私は答えに窮する。私の読解力のなさにご容赦願いたい。